声を出しやすくするには、喉のリラックスが重要です。しかし、顎に力が入っていると喉のコンディションは整いにくくなります。近年はマスクを付けている時間が長くなり、顎関節症になっている方が世界的に増えているとのこと。今回は顎の状態のセルフチェックの方法や、硬くなっている場合の改善方法を紹介します。
普段から顎に力が入ってしまうことで、声が出にくくなっている方にむけて改善方法を紹介するよ
筆者も昔顎関節症でしたが治ったら声がよく出るようになりました。体験談に基づいていますので参考にしてみてくださいね^-^
意外に多い顎の不調を抱えるケース
日本歯科医師学会によると、顎の不調を一生の間に感じたことがある人の割合は2人に1人。顎のトラブルは多くの方が経験するそうです。
顎の疾患としてメジャーなものに顎関節症がありますが、日本では顎関節症と診断される人は数千万人を超え、国民的な疾患といわれています。
さらに、近年のマスク生活によって、ますます口が開けづらくなったり、顎が疲れたりなどのさまざまな症状が引き起こされ、顎がリラックスできていない方が増えているそうですよ。
顎関節症ってなんだろう
顎関節症について説明します。
顎関節症の主な症状
症状の軽いものから重いものまで症状はさまざまですが・口を開こうとすると顎が痛む・大きく口が開けられない・口の開け閉めで顎関節に音がする、このような状態は顎関節症といわれます。
顎関節症の原因
顎関節症の原因はさまざまあり、複合的に絡み合っているそうです。
噛み合わせ、咬み癖、姿勢、くいしばり、寝るときの姿勢、 健康状態、ストレスなどによって知らず知らずのうちに原因が積み重なって発症するといわれます。
顎の状態をチェックする方法
自分でできるチェックできる方法を紹介します。もし、痛みがあるときは無理せず専門機関を受診してくださいね。
ゆっくり口を縦に開ける
口をかなりゆっくり、縦にまっすぐ開けます。まっすぐスムーズに開くかチェックしてみてください。
顎にズレが生じたり、音がしたら関節周りや関節自体に問題があるそうです。そもそも力を入れないと縦に開かないケースも。耳の前あたりに指を当てると関節の動きが感じられますよ。
顎を左右に動かす
顎を左右にゆっくりと時計の振り子が揺れるように動かします。
左右同じように動くか、差が大きくないかを確かめます。片方にのみ動きやすい場合は、噛み癖が強かったり、顎にズレが生じているそうです。
弱く速く噛んで筋肉の状態を調べる
軽くストレッチした後に、少し微笑んでリラックスした状態で、出来るだけ弱く小さく、速く、カチカチ、パパパパと振動するように噛んでみます。
左右同じように歯が接触するか、頬が同じように動くかをみます。顎のバランスが悪いと、左右差が大きく片側のみが多く接触します。全体的に硬くなっていると、本来当たってほしい奥の歯が接触しないケースも。
顎を緩める方法
顎の状態をよくする方法を紹介します。こちらも、痛みや違和感がある場合は無理せず本格的な治療については専門機関に相談してくださいね。
チューブを使用した運動
・ビニールチューブをゆっくり「グーッ……パ」と噛みます。
いろいろな場所でゆっくり5回づつ、無理せずにくり返します(下図を参照)
引用:仙台歯科医師会「歯の健康だより Smile No.31」
初めは「オエっ」となるかもしれませんが細めの6㎜から始めるとやりやすいです。ビニールチューブはホームセンターなどで手軽に購入できますよ。
・首のストレッチと同時に行うと首の筋肉が楽になります(下図を参照)
引用:仙台歯科医師会「歯の健康だより Smile No.31」
顎のくせ取り体操
口が開きにくい、痛みがある、不快感がある、まっすぐ開かないなどは、今までの長い間の悪い癖があるため。ここでは、癖をとって緩めていく体操を紹介します。
「ウー」体操
口を前に出してから一気に力を抜く(5秒づつ2回)
痛みがある場合は無理せず次に進む
ガクンとなって不快な場合はゆっくりと。ガクンとなりにくいようにやさしく行う
引用:仙台歯科医師会「歯の健康だより Smile No.31」
「イー」体操
口を横に「イー」と広げ後ろに引きながら、顔の筋肉を横に引っ張り一気に力を抜く(5秒づつ2回)
引用:仙台歯科医師会「歯の健康だより Smile No.31」
顎の振り子・押しくらまんじゅう体操
①鏡を見ながら下顎を左右にゆっくり動かす。やりづらい方がある場合は、楽な方向に不快でない程度に少し強めに動かして、3秒ほどそのままキープする(2~3回くらい)
その後、不快な方向にも動かしてみる
引用:仙台歯科医師会「歯の健康だより Smile No.31」
②上の動きを、今度は頬に両手をあてながら行う。下顎をゆっくりと左右の手に押しつける
引用:仙台歯科医師会「歯の健康だより Smile No.31」
のけぞりアクビ体操
手を後ろに組んで、頭を後ろに倒しながらアクビをする。気持ちよく、ゆっくりするのがポイント。背中、首、肩を伸ばすように、痛みがないように取り組む。
引用:仙台歯科医師会「歯の健康だより Smile No.31」
ゆっくり開閉体操
耳の前の顎の関節に手を当てながら、ゆっくりと縦にまっすぐに開いたり閉じたりする。顎がズレてしまうときは、まっすぐになるように手で支え、押しながら。気持ちよい範囲でゆっくり3回繰り返す。
引用:仙台歯科医師会「歯の健康だより Smile No.31」
食いしばらないようにする
通常、食事の時以外は歯と歯は離れた状態で、上下の歯は触れ合わず2mm程度の隙間があるそうです。しかし、イライラしたり何かに集中したりすると食いしばりやすくなります。
寝ている間も、同様に通常であれば歯と歯は離れた状態ですが、日中のストレスにより歯ぎしりや食いしばりをしてしまい、その力はなんと体重の約2倍とのこと。
また、顎関節は短時間であれば強い負担でも耐えられますが、力が弱くても長時間かかる負担には、弱いという特徴があるそうです。食いしばりが続くと顎を痛めやすくなりますね。
さらに、マスクをするとマスクのひもに顎が引っ張られるので、顎に知らないうちに力が入り、筋肉の緊張を引き起こしやすくなってしまうそう。
また、長時間のマスクで顎が動かしづらくなることから、顔まわりや首、肩の筋肉までもが緊張し、歯を食いしばりやすくなるといわれています。
このようなことから、自分で「食いしばっていないかな?」と生活の中で注意したり、ストレッチを取り入れたりすることが大切なことがわかりますね。
顎を緩めておくと声が出やすくなる
顎関節症は顎関節の異常から始まり、全身に様々な症状をきたしてしまうもの。「声が出しにくくなった」「声が枯れた」「活舌が悪くなった」など、発声に問題が起きることも多くあります。
口をリラックスした状態で開くことができないと、発声自体に自信が持てなくなったり、不安になったりすることも。
私がお世話になった歯科で「顎関節症をそのままにしておくことは、車のタイヤの空気圧のバランスが悪いとハンドルが左右にぶれやすかったり、きしんだ音をだしたりするけど、そのまま走行し続けるのに似てる」と説明されました。
そんな風に聞くと心配になるかもしれませんが、たいていの場合はちょっとした日々の取り組みを続ければ改善するそう。私も日々の取り組みで治すことができました。もし、心当たりがある方は参考にしてみてくださいね。
参考:日本歯科医師学会「顎関節症」 仙台歯科医師会「Smile No.31」