柔らかな音とオシャレな雰囲気で、カフェミュージックとして愛されているボサノバ。しかしよく耳にする割には「いまいちボサノバってよくわからない」「ボサノバってジャズの仲間なの?」と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、ボサノバ音楽についてわかりやすく説明していきます!
ボサノバとは?
ボサノバとは「bossa nova」と書きます。「bossa nova」はブラジルのリオデジャネイロで誕生した音楽です。
「bossa nova」はブラジルの公用語であるポルトガル語。「bossa」とは「傾向(やり方)」や「隆起」という意味、「nova」とは「新しい」を意味です。「bossa nova」で「新しい傾向(やり方)」「新しい感覚」という意味になります。
ボサノバは1950年代、ブラジル伝統音楽のサンバやショーロが、当時アメリカで流行していたジャズに影響を受けて生まれました。
ボサノバの歴史
日本でもすっかり定着したジャンルですが、ボサノバは比較的新しく生まれた音楽ジャンルでその歴史はさほど古くありません。ボサノバを知るために、歴史を紐解いてみましょう。
ボサノバとジャズの影響
1940年代、ブラジルではラジオが普及し始め、ラジオで流れる音楽は少しずつブラジル音楽に影響を与えるようになりました。
ジャズの生みの親ともいわれるアントニオ・カルロス・ジョビンは、当時まだ少年でしたが、当時ブラジルのラジオで人気があったフランク・シナトラによってジャズの影響を受けたといわれています。
アントニオ・カルロス・ジョビンだけでなく、この時代の若いアーティストたちは、もともとあったブラジル音楽に、ジャズの要素を組み込みながら新しい音楽のジャンルである「ボサノバ」を生みだしていったのです。
最初のボサノバ『Chega De Saudade』
1958年に、アントニオ・カルロス・ジョビン作曲、ヴィニシウス・ジ・モラエス作詞の『Chega De Saudade』邦題「想いあふれて」が発表されました。ジョアン・ジルベルトによって歌われ、“最初のボサノバ”と言われています。
新しい感覚と洗練されたサウンドが中流階級の若手アーティストたちの心をつかみ、ボサノバが流行するきっかけとなりました。
ボサノバが世界へ広まったきっかけ
今でこそ世界的に普及しているボサノバですが、始まったころはブラジルの一部の裕福層の若者たちの間での流行にとどまっていました。
世界的にボサノバが広まるきっかけになったのは、1963年にジョアン・ジルベルトとアメリカのジャズサックス奏者のスタン・ゲッツの共演によって制作された『ゲッツ/ジルベルト』というアルバムです。
シングルカットされた『イパネマの娘』は、ジョアン最初の妻であるアストラッド・ジルベルトが歌ったことで大流行。ボサノバは世界的な知名度を獲得しました。
ボサノバの今
それ以降、ボサノバは「都会で洗練された音楽の代名詞」として世界中で親しまれています。その雰囲気やリズムは、ジャズやポップス界にもどんどん入り込み定着していますよね。
一方で、ブラジルではオシャレな音楽というより、サンバから派生した伝統音楽の色合いが濃く、現地の若者の間ではあまり浸透していないそうですよ。意外でした(^-^;
日本でいう懐メロ的な位置づけなんだって
ボサノバの雰囲気がわかるおすすめ映画
ボサノバ音楽をつくった人物の1人にジョアン・ジルベルトがいます。“ボサノヴァの神様”と称されるブラジルの伝説的ミュージシャンです。類稀なギター演奏と甘美な歌声によって世界中で有名になりました。
ジョアン・ジルベルトは変わり者としても有名で、何日もバスルームに閉じこもってギターを鳴らし、それまでにないスタイルのギター奏法を発見したそうですよ。残念ながら、2019年に88歳でこの世を去っています。
ここでは、10年以上公の場に姿を現さなかった、変わり者のジョアンの生涯を追うドキュメンタリー映画を紹介します。
映画『ジョアン・ジルベルトを探して』
引用:ミモザフィルムズ
謎の多いジョアン・ジルベルトの生涯を一人のジャーナリスト目線で追いかける不思議なストーリー。
ブラジルのイパネマビーチをはじめとする美しい風景、目にも耳にも心地良い音楽ドキュメンタリー映画です。個人的には、なんだか終始つかみどころのない印象の映画でしたが、ボサノバの空気感だけは鮮明に伝わってきました。ゆったり観るのにおすすめです。
ボサノバはブラジル発祥のゆるやかな音楽
日本では、カフェ音楽やBGMとして人気を博すボサノバは、ヒーリングミュージックとしてもよく耳にします。ジャズの一部と認識している方も多いですが、ブラジル発祥の独自のスタイルを持つ音楽だったのですね。
しかし、ボサノバを聴いていると、細かいことはちょっとわきに置いておきたい気分に。とにかく、ボサノバの魅力は、自然あふれる美しいブラジルで生まれた独特のリズムと、心地よいフィーリングだと思います。
美しい海岸や空、どこか懐かしい風景、そんなことを想像しながらボサノバをゆっくり聴いて、ちょっと良い時間を過ごしてみませんか。