「頑張って大きい声を出すことを繰り返したら、喉の調子が悪い…」「声を出そうとすればするほどよけい声が出なくなってしまう」このように声が小さいことでお悩みの方はいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、声の小ささは、原因を知り適切に対処すれば誰でも改善していくことができます。
今回は、声が小さいとお悩みの方に、声が小さくなる原因と対処法について紹介するよ
声が小さくなる原因
声が小さくなる原因について説明していきます。
声帯がうまく振動していない
声帯がうまく振動してないと声が小さくなる原因になります。
声帯は喉のあたりにある2枚のヒダで、その間を息が通ることで振動して声のもとが生まれます。大きな声を出すには、声帯がよく振動していた方が有利です。
声帯がよく振動するには、声帯が力まずに適度な力加減で閉じていることが理想。声帯がうまく閉じていない状態で声を出すと無駄な息が多くなり、大きな声を出すことが難しくなります。
逆に、喉が締まりすぎていると、声帯の間を空気が十分に流れることができず、大きな声が出しにくくなります。
声の共鳴が弱い
声帯で生まれた声は、喉や口、鼻の中を通って響かせてわたしたちの耳に届きます。そのため、身体が硬くなっていたり、響く場所が狭かったりすると声が小さくなります。
音が響かない状態としては、アコースティックギターのボディを押さえつけている状態をイメージしてみてください。弦を弾いて音を出しても、音がボディが振動できないため、響かず小さな音しか出せないのに似ています。
呼吸が安定していない
呼吸が安定していないと、大きな声が出しにくくなります。前述したように、声は息が原動力。原動力である息を安定して使うには腹式呼吸が適しています。胸式呼吸は喉が緊張した状態になりやすく、使える息の量も少ないので注意が必要です。
メンタルの問題
小さい声になる原因はメンタル面での影響が考えられます。発声器官はとても繊細にできていて、メンタル面が反映しやすいもの。緊張が強かったり、心配なことがあると、本人は意識しなくても声にその影響が出てきます。
精神的な強いショックやストレスを受けたことが原因で、声がでなくなってしまうような話は、聞いたことがあるのではないでしょうか。
声が小さい人の多くは、いろいろ考えすぎてしまったり、自分に自信がなかったり、いろいろなことを感じやすかったり…ということも。メンタルが影響で引き起こされる、過緊張や力みは声が小さくなる原因になります。
小さい声の改善方法
小さい声を改善する3つの方法を紹介します。
声帯トレーニング
声のもとを生みだす「声帯」のトレーニングをしてみましょう。
自分の声帯の位置を確認する
上図を参考にしながら、自分の声帯のあたりに手を当ててみてください。口を閉じて軽く声を出してみましょう。振動を感じる場所が声帯の位置です。
力を抜いて小さい声を出す
喉、首に力を入れないように意識しながら、できるだけ小さい声で「オーーーー」と声を出してみてさい。出しやすい音程で大丈夫です。声帯を、少ない息の量で無駄なく振動させてあげるイメージです。
声帯の位置がよくわからない人も、まずは「なんとなくこの周辺」で大丈夫。声帯トレーニングは箸をつかうくらい繊細なコントロールだといわれているよ
声帯周辺の力みを抜いていく
慣れてきたらできるだけ張りのある声を目指しましょう。使う息の量を減らしながら、声を小さくして、声帯を丁寧に振動させることをイメージしてみてください。声帯の適度の閉鎖を促す効果が期待できます。
さらに慣れたら、音程を半音などで行ったり来たりしながらやってみましょう。喉を内側からほぐすイメージで声を出すのがポイントです。大きい声は必要ありません。
はじめは、力みや歪みがあると、少ない息の量で声帯を鳴らすのは難しいかもしれません。焦らず丁寧におこなっていると、だんだんできるようになりますよ。
痛みや違和感がある場合は無理は禁物!気になるときは、耳鼻咽喉科で声帯を診てもらうのもひとつだよ
共鳴トレーニング
- あくびをしながら口の奥、喉の広がりを感じる。喉をストレッチするイメージでゆっくりと息を吸いながら、繰り返す(できるだけ力まずにおこなう)
- あくびをしながら声を出したり、話したり歌ったりしてみる。もにゃもにゃでOK(あくびは自然に喉が下がるので、自分で下げようとしない)
- 口の奥、喉の広がりをキープしたまま、発音をはっきりさせて話したり歌ったりする(広がりはそのままに、舌の付け根に力が入らないように)
あくびは喉を開く代表的なトレーニング方法ですが、あくびそのままで声を出そうとすると、喉を押し広げすぎてしまい、喉に力が入ってしまいがちです。声が響く空間を、リラックスした状態で広げることがポイントです。
腹式呼吸のトレーニング
- 座っても立ってもいいので、できるだけ全身リラックスして息をできるだけ長く吐き出す(お腹のあたりが縮む感じを意識しながら)
- 息を吐ききった状態で息を止めてみる。このとき体のどこに力がかかっているか確認する。(お腹のあたりに力がかかればOK。首、喉に力がかかってくる場合は、お尻の穴を締めることを意識してもう1度やってみる)
- 息を吐ききったら、瞬時にお腹のあたりの力を緩めて、縮んで広がったスペースに息を入れる(空気が自然に入ってくる感じ。息をあえて吸い込むという感じではなく)
- 気持ちがよい範囲でくりかえす。(初めは体の使い方に注意して丁寧におこない、だんだん無意識でもできるようになるとよい)
無理をしないで、リラックスをしてトレーニングしてくださいね。腹式呼吸は自立神経の安定にもつながります。
メンタル面からの改善方法
人は心配したり考えすぎたりしていると、身体が硬くなり呼吸や血流も弱まるので、声が小さくなりがちです。漠然とした不安や、考えすぎの状態は気づかないうちに慢性化しやすいもの。悪循環に陥らないようにメンタル面の改善方法を紹介します。
心配はいったん受け止めてから「おしまい」宣言で離れる
なんとなく心配な気持ちが続く場合は、1度自分の心の状態を客観視するのがおすすめです。具体的には、今どのような実況で自分がどう感じていいるのかを、あえて言語化する方法があります。シンプルな単語でOK。
言語化したら、口に出してみたり、紙に書いてみたりしてみましょう。事実や感情を言葉で分類すると自分を冷静にみることができます。そのうえで、考えてもどうにもならないことに関しては、一旦考えることをやめます。
きっかけとして「とりあえず、おしまい」などと自分でわかりやすいように宣言するのもよいでしょう。「心配をなしにする」というよりは、まずはそのまま受け止めてから手放す感じ。習慣化みたいなもので、小さいことの積み重ねで変わってきますよ。
自分なりに声のコンディション管理してみる
なにかの本番前などに声を出すのに不安があるときは、楽器として自分の状態に目を向けてみるのも一つの方法です。冷静に注意を払うことで「あ、息が浅くなってるな」とか「喉に力が入ってるな」と気づく場合があります。
そんなときの対処法も自分なりにもっておくと安心にもつながります。あらかじめ発声前のルーティンにしておくのも有効です。
人前で声を出すということに慣れてしまう
人前ではとくに声が小さくなるという場合は、あえて人前で声を出す機会をつくってみる方法もあります。まずは親しい人や、安心できる場所から経験を広げていくとやりやすいかもしれません。
そもそも経験がないことは緊張しやすいもの。ましてや、もともと緊張しやすい人はなおさら身体が固くなって声が出にくくなります。
ひどい緊張は癖になってしまうこともあります。大きな緊張を避けるために、あえて自分からハードルを下げた経験を積むことで耐性をつけるのもひとつです。
日々の心がけで、声は誰でも変えられる
今回の記事では小さい声の原因と解決法についてご紹介してきました。コンプレックスを改善するには、日々の中で、自分にあった改善方法を無理なく積み重ねていくことが大切です。
「声が小さいから、すぐ治したい」「声が小さいことはダメなこと」という考えで自分の声に向き合ってしまうと、焦りからますます緊張して声が出にくくなる危険性があります。モチベーションも保ちにくくなりますね。
できることに目を向けた方が、体の緊張も緩み、無駄な力みがとれて楽に声が出せる状態に近づくことができますよ。声は、日々の心がけで誰でも変えることができます。また、声に自信がつくことで、自分自身が変わっていくこともできます。
最終的には、声は大きさより、伝わる声であるかどうかが大切です。リラックスして、自分に合った方法で声をよくしていってみてくださいね。
参考文献: 荻野仁志・荻野仁彦著「発声のメカニズム」音楽之友社 米山文明著「声と歌にもっと自信がつく本」王様文庫 AKIRA著「奇跡のボイストレーニング」つた書房 司拓也著「繊細すぎる人のための声の出し方」朝日新聞出版